はじめに
皆さんこんにちは。エコドライブの鈴木です。
今日のテーマはくら寿司がアメリカの食文化を変えたことについてです。
今アメリカではくら寿司の勢いがすごいんですが、一体何がすごいのか、何を変えたのかという話をさせていただきます。

くら寿司ってアメリカでそんなに人気なの?
日本の回転寿司がそのまま通用するのかな?

実は我が家もくら寿司大好きで、先週も行ってきたんだ。
30分ぐらい待ったけど、それでも行く価値があるんだよ。

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くら寿司のアメリカ進出の軌跡
くら寿司は2009年にアメリカに進出し、わずか10年後の2019年には上場まで果たしています。
現在アメリカに73店舗を展開し、今後さらに9店舗のオープンが予定されています。
日本のサービス業が全米展開するというのは、本当にすごいことなんです。
■ サービス業の海外展開の難しさ
私自身も元々サービス業で、駐在員としてアメリカに来た経験があるので、その難しさはよくよく分かっています。
文化の違い、労働環境の違い、法規制の違い、そして何より消費者の嗜好の違い。
これらすべてをクリアして成功するのは、並大抵のことではありません。
ちなみに吉野家さんも頑張っていて、今105店舗ぐらい全米に展開しています。
でも、くら寿司の勢いは別格なんです。
今日は企業分析というよりも、あえて消費者視点で、なぜここまでくら寿司が旋風を起こせているのかという話をしていきたいと思います。
アメリカにおける寿司の位置づけ
結論から言うと、くら寿司は庶民のファミリー層とカップル層のハートをガッツリ掴んだんです。
回転寿司って、日本では当たり前の存在じゃないですか。
駅前にもショッピングモールにも、どこにでもありますよね。
でも、アメリカでは全く当たり前じゃないんです。
むしろ握り寿司自体が、庶民には物珍しい存在なんですよ。
■ 寿司は高級品というイメージ
アメリカでは寿司というのは、かなり高級で敷居が高い食べ物として認識されています。
日本で言うところのキャビアやフォアグラのようなイメージに近いですね。
庶民の人って、私も含めて、普段からキャビアとかフォアグラとか食べないですよね。アメリカでも寿司はそんな感じに捉えられています。
特別な日に、特別な人と、特別な場所で食べる。
それがアメリカにおける寿司の位置づけだったんです。
くら寿司が来る前のアメリカの寿司事情

私は2004年からアメリカにいるので、くら寿司が来る前の状況がよく分かります。
あの頃はまだカウンター寿司しかなかったです。
薄暗い照明、静かな雰囲気、そして板前さんとの緊張感のあるやり取り。
とてもとても子供が行けるような雰囲気じゃなかったですよ。
■ 不透明な価格設定
値段も不透明で、メニューに価格が書いてないところも珍しくありませんでした。
よく「MP」って書いてあるんです。
これはマーケットプライスの略で、要は時価ってことです。
その日の仕入れ値によって価格が変動するという、庶民には恐ろしいシステムです。
どちらかというとセレブとかがお忍びで行くような場所でしたね。
アメリカで寿司屋というと、そういう格式の高い高級寿司屋か、それか日系の居酒屋が提供する巻物ぐらいしか選択肢がなかったんです。
■ 庶民の寿司=カリフォルニアロール
居酒屋に関しては子供連れでも行けたんですが、そこで出てくる寿司といえば決まってカリフォルニアロールでした。
カリフォルニアロールというのは、中にアボカドが入っていて、カニカマやきゅうりなどを、ご飯で巻いたものです。
海苔が内側に巻かれているのも特徴ですね。
庶民はこれが寿司だと思っていたんです。
高級寿司店での緊張の体験
当時私は20代そこそこの庶民だったので、よくカリフォルニアロールを食べに行っていました。
本物の寿司なんて、高くて行けなかったですからね。
■ メニューすらない店も
たまに背伸びして本物の寿司屋に行くと、場所によりますが、メニューに写真がないんです。
下手したらメニュー自体もない。
どうするかって言ったら、ウェイトレスに聞くしかないんです。
「今日のオススメは?」とかって聞いて、相手の説明を必死に理解しようとする。
英語での魚の名前なんて、日本人でも分からないことが多いですからね。
出てくるまでにめちゃくちゃ時間がかかるし、値段も分からないし、写真もないので何が出てくるか分からない。
そんな状況でビクビクしながらオーダーするわけです。会計の時まで総額が分からないという恐怖もありました。
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2009年、くら寿司の衝撃的デビュー
そんなこんなで2009年に、くら寿司が第1号店をカリフォルニアにオープンしたわけです。
確か当時は、全品一皿1ドル75セントとかそんな感じだったと記憶しています。
当時1ドル100円ぐらいだったから、言ってみれば一皿175円。
日本の感覚でも十分安いですよね。
■ 革新的なタッチパネル式オーダーシステム
何より衝撃的だったのが、各席に設置されたモニターです。
今では当たり前かもしれませんが、当時はものすごく物珍しかったんです。
モニターにすべてのメニューが写真付きで表示されているんですよ。
値段も明確に書いてある。
それをタッチするだけでオーダーできる。
ピッピッピって押すと、あっという間に注文した寿司が届くんです。
もう1分とか2分とかそんなレベルで、レーンを流れてやってきます。
この透明性とスピード感は、それまでのアメリカの寿司文化では考えられないものでした。
■ ゲーミフィケーションの導入
そして極めつけが、15皿食べると景品がもらえるというシステムです。
皿を返却口に入れると、画面でルーレットが回って、当たりが出ると「ガチャポン」から景品が出てくる。
これを見て、業界人もお客さんも、みんな「やられた!」って思いましたね。本当に革命的でした。
子供たちを虜にした仕掛け
まず何より、子供たちが完全にメロメロになりました。
景品がもらえるというインセンティブもさることながら、自分でオーダーできるという体験が新鮮だったんです。
普通、アメリカでは子供がウェイトレスさんに直接オーダーする光景ってないんですよ。
親が代わりに注文するのが一般的です。
■ 子供の自立心を刺激するシステム
でも、くら寿司ではモニターで自分の好きなものを選んでオーダーできる。
値段も明確だから、親も安心して子供に任せられる。
これで本当に子供たちが夢中になりました。
完全にエンターテインメントとして成立しているんです。
アメリカ人は本当にエンターテインメントが大好きですからね。
食事という日常的な行為に、ゲーム的な要素を加えることで、特別な体験に変えてしまったんです。
■ 本物の握り寿司への自然な導入
しかも重要なのは、庶民にとって当たり前だったカリフォルニアロールだけじゃなくて、本格的な握り寿司を食べるようになったということです。
マグロ、サーモン、エビ、イカ、タコ。
今まで高級寿司店でしか食べられなかったネタを、気軽に試せるようになったんです。
アメリカ人のコミュニケーション文化との絶妙な相性
くら寿司のシステムは、アメリカ人の社交的な性格とも見事にマッチしました。
レーンを流れる寿司を見て、隣の人が何を頼んだか分かるんですよね。
自分の前を通り過ぎていく寿司を見て、「あれ美味しそう」と思ったら、すぐにオーダーできる。
■ 会話のきっかけになる仕組み
アメリカ人は知らない人にも平気で話しかけますから、「それ美味しいの?」なんて聞いちゃうんです。
「めちゃくちゃ美味しいよ!」なんて返事が返ってきたら、「じゃあ私も頼もう」という流れになる。
このソーシャルな食事体験が、アメリカ人の心を掴んだんです。
高級寿司店の静かで緊張感のある雰囲気とは正反対の、カジュアルで楽しい空間が生まれました。
今では忙しい時は1時間待ちなんて当たり前です。
それでもみんな喜んで待っているんです。
アメリカの子供たちの新しい誕生日の定番
うちの子もくら寿司が大好きで、誕生日になると「寿司が食べたい」と言うんです。
そして具体的に「くら寿司に行きたい」と指定してきます。
私が「もっと美味しい本格的なカウンター寿司のお店があるよ」と提案しても、絶対にくら寿司がいいと譲らないんです。
■ 子供にとっての特別な場所
これは味だけの問題じゃないんですよね。
くら寿司は子供たちにとって、単なるレストランではなく、特別な体験ができる場所なんです。
自分で好きなものを選べる自由、15皿チャレンジのワクワク感、景品がもらえる達成感。これらすべてが組み合わさって、忘れられない思い出を作ってくれる場所になっているんです。
現在の価格設定と変わらぬ人気
先週行った時は、一皿3ドル75セントになっていました。
現在のレートで計算すると約500円。
正直、一皿500円の回転寿司って、日本の感覚だとかなり高いですよね。
スタート時の1ドル75セントから考えると、倍以上に値上がりしています。
■ アメリカならではの追加料金
さらに驚くのが、日本では当たり前の無料のお茶が、アメリカでは有料だということです。
これも3ドル75セント。つまり500円です。
家族4人で行って、それぞれがお茶を頼んだら、それだけで2000円。
日本人の感覚だと「高い!」と思わざるを得ません。
■ それでも衰えない人気の理由
でも、それでも1時間待ちが当たり前なんです。
この人気の持続力がすごいんです。
価格が上がっても客足が衰えないということは、それだけ価値を認められているということです。
アメリカ人にとって、くら寿司は単に安い寿司屋ではなく、特別な価値を提供する場所として認識されているんです。
くら寿司が変えたアメリカの食文化の本質
くら寿司がアメリカの食文化を変えたことの本質は、それまでカリフォルニアロールしか知らなかった庶民層に、本格的な寿司文化を身近なものとして提供したということです。
■ 成功の鍵となった戦略
その成功の戦略を改めて整理すると:
**良心的で分かりやすい価格設定** – すべてのメニューに明確な価格表示があり、会計時のサプライズがない。
**エンターテインメント性の追求** – 15皿チャレンジやガチャポンなど、食事を楽しい体験に変える仕掛け。
**テクノロジーの活用** – タッチパネル式オーダーシステムによる利便性の向上。
**家族連れへの配慮** – 子供が楽しめる環境作りと、親が安心できる価格設定。
**オープンな雰囲気** – 高級寿司店の堅苦しさを排除し、カジュアルな空間を演出。
レッドオーシャンとブルーオーシャンの見極め
高級寿司市場は、もはや完全なレッドオーシャンです。
日本人の寿司職人だけでなく、韓国人、中国人、フィリピン人、ベトナム人など、様々な国籍の人々が「儲かる」ということで高級寿司店を開いています。
競争は激化し、差別化も難しくなっています。
■ 誰も気づかなかったブルーオーシャン
一方で、庶民向けの寿司市場は完全なブルーオーシャンでした。
誰もがこの市場の可能性に気づいていなかった。
いや、気づいていたとしても、「アメリカ人に本格的な寿司は受け入れられない」「回転寿司なんて安っぽくて成功しない」という固定観念に縛られていたんです。
くら寿司はこの固定観念を打ち破り、見事に新市場を開拓しました。
だからこそ、わずか10年で上場できるほどの成長を遂げることができたんです。
日本企業がアメリカで成功するための教訓
今回のくら寿司の成功から、これからアメリカに進出を考えている日本企業が学べることは多いです。
■ 現地の文化を理解し、適応する
まず重要なのは、アメリカ人の価値観や行動パターンを深く理解することです。
アメリカ人はエンターテインメントが大好き。
価格の透明性を重視する。家族での外食を大切にする。
社交的で、知らない人とも気軽に会話する。
これらの特性を理解し、それに合わせたサービス設計をすることが重要です。
■ 日本の常識にとらわれない
日本では当たり前のことが、アメリカでは通用しないことも多いです。
逆に、日本では考えられないようなことが、アメリカでは大成功することもあります。
例えば、お茶が有料というのは日本人には衝撃的ですが、アメリカでは飲み物が有料なのは当たり前。
この違いを受け入れ、現地の常識に合わせることが必要です。
■ テクノロジーを積極的に活用
アメリカ人は新しいテクノロジーに対して非常にオープンです。
くら寿司のタッチパネルシステムも、最初は物珍しさから注目を集め、今では便利さから定着しています。
テクノロジーを使って顧客体験を向上させることは、アメリカ市場では特に重要な要素です。
くら寿司が示した新たな可能性
くら寿司の成功は、単に一企業の成功物語ではありません。日本の食文化が世界で通用することを証明した重要な事例です。
■ 文化の橋渡し役として
くら寿司は、日本の寿司文化をアメリカ人が受け入れやすい形にアレンジし、提供しました。これは文化の押し付けではなく、文化の橋渡しです。
本格的な寿司の美味しさを、エンターテインメントという包装紙で包んで提供する。この巧みな戦略により、アメリカの子供たちが自然に寿司を食べるようになったんです。
■ 次世代への影響
特に重要なのは、アメリカの子供たちが寿司を当たり前の食べ物として認識するようになったことです。
彼らが大人になった時、寿司はもはや特別な食べ物ではなく、ピザやハンバーガーと同じような日常的な選択肢の一つになっているでしょう。
これは日本の食文化にとって、計り知れない価値があります。
まとめ:くら寿司が証明した可能性
くら寿司の成功は、適切な戦略と実行力があれば、日本企業もアメリカで大成功できることを証明しました。
重要なのは、日本の良さをそのまま押し付けるのではなく、現地の文化や価値観を理解し、それに合わせて適応させること。
そして、競争の激しいレッドオーシャンではなく、まだ誰も気づいていないブルーオーシャンを見つけること。
■ これからの展望
くら寿司は今後もアメリカでの店舗拡大を続けていく予定です。彼らの成功は、他の日本企業にとっても大きな励みになるでしょう。
日本には素晴らしい商品やサービスがたくさんあります。
それらを世界に届けるためには、くら寿司のような柔軟な発想と大胆な挑戦が必要です。
皆さんも機会があれば、ぜひアメリカのくら寿司を体験してみてください。
日本とはまた違った魅力と、アメリカ市場で成功するためのヒントを発見できるはずです。
これからアメリカ進出を考えている企業や個人の方にとって、今日の話が少しでも参考になれば幸いです。
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