アメリカ人の9割が転職経験あり?雇用制度と従業員が定着しない理由

はじめに:今回のテーマは「従業員定着の難しさ」

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アメリカで会社を経営するときに、特に大変なことって何があるんでしょうか?

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こんにちは、エコドライブの鈴木です。

今日のテーマはやってみたから分かったアメリカでの起業の難しさ、その3つ目「従業員定着の難しさ」についてお話しします。

僕自身、アメリカで起業してちょうど10年になりますが、これからお話しする内容は、どこかで聞いた話や誰かの受け売りではなく、僕自身の実体験からお伝えしていきます。

今回はお話しする内容が長くなるので、前後編に分けてお届けします。

前編では、「なぜアメリカでは従業員定着が難しいのか」を中心に整理します。

後編では、その背景にあるAt-will雇用と、エコドライブが従業員に長く働いてもらうために大切にしていることへ進む予定です。

【動画版はこちらから】
 


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アメリカで会社を経営する3つの難しさ、その3つ目

ロサンゼルスのオフィスビル街

このシリーズでは、アメリカでの起業の難しさとして、次の3つを挙げてきました。

  • 1つ目:銀行融資の難しさ
  • 2つ目:商品品質の見極めの難しさ
  • 3つ目:従業員定着の難しさ

今回はその3つ目、従業員定着に絞ってお話しします。

会社を続けていくうえで、人を採用することはもちろん大切です。

ただ、採用した人に長く働いてもらうことは、それ以上に難しいテーマになることがあります。

特にアメリカのように人材の流動性が高い社会では、「一度採用できたら安心」というわけにはいきません。

働く側にとっては、より良い条件や、自分に合う環境を探して動くことが珍しくありません。

会社側から見ると、せっかく仕事を覚えてくれた人が別の会社へ移る可能性が常にあるということです。

だからこそ、アメリカで会社を経営するうえで、従業員定着はとても大きな課題になります。

そもそもアメリカは転職経験率がとても高い

アメリカは従業員の定着が難しいとよく言われていて、そもそも転職経験率がとても高いんですね。

これはデータでも示されています。

参考になるのが、Indeed Japanが実施した「転職」に関する5ヵ国比較調査です。

この調査は、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国で現在働いている20代から50代の正社員(無期雇用・フルタイム)を対象に、仕事観や転職経験、勤務先への満足度などを比較したものです。

対象者は合計8,848名

日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、韓国も含めて並べて比較されているため、国による働き方や転職への考え方の違いが見えやすい調査になっています。

日本とアメリカの転職経験率の違い

この調査で特に分かりやすいのが、転職経験率の違いです。

日本の転職経験率は59.7%だったのに対して、アメリカは90.1%でした。

つまり、日本では転職経験がある人が6割弱なのに対して、アメリカでは9割ほどの人が転職を経験している、ということになります。

もちろん、この数字だけを見て「アメリカ人はすぐ辞める」と決めつけることはできません。

ただ、アメリカでは仕事を変えることが日本よりも一般的な選択肢として受け止められている、ということは言えそうです。

5ヵ国全体で見ても、日本は転職経験率が低い

調査では、5ヵ国の転職経験率が並べて示されています。

  • イギリス:92.7%
  • アメリカ:90.1%
  • ドイツ:84.2%
  • 韓国:75.8%
  • 日本:59.7%

日本は5ヵ国の中で最も低い数字です。

この結果を見ると、日本では一つの会社で長く働く考え方がまだ残っている一方で、アメリカを含む他の国では、仕事を変えることがより身近な選択肢になっていることが分かります。


勤務先への満足度も、日本とアメリカで差がある

もう一つ興味深いのが、勤務先への満足度です。

現在の勤務先に「満足」または「とても満足」と答えた人の割合は、日本が41.5%だったのに対して、アメリカは85.2%でした。

アメリカは日本の2倍以上の割合で、今の勤務先に満足している人が多いという結果です。

ここだけを見ると、「満足しているなら、なぜ転職経験率が高いのか」と感じるかもしれません。

ただ、この結果は、アメリカでは不満があるから転職するだけではなく、自分に合う職場やより良い条件を探して転職する人も多い、という見方につながります。

アメリカの方ってすごくフランクなので、顔馴染みになるといろんな世間話をお店のスタッフさんとすることがあるんですけど、「ここすごくいい会社なんだよ」って結構みんな言うんですね。

この調査の結果も、そうした肌感覚と合っているなと感じます。

そう考えると、日本では我慢しながら働いている人がまあまあいる一方で、アメリカでは満足できるところが見つかるまで転職を重ねる、という構図が見えてきます。


転職理由にも、国による違いがある

転職したい理由にも、国による違いが出ています。

調査では、日本では「現状の職場に不満や嫌なことがある」が転職理由になりやすい傾向がありました。

一方で、アメリカを含む他の4ヵ国では、「現状の仕事に大きな不満はないが、自分にとってプラスになる可能性がある」という理由が多い傾向だったとされています。

つまり、日本では今の不満を解消するために転職を考える人が多い一方で、アメリカでは今の職場に大きな不満がなくても、より良い条件や成長の機会があれば転職を考える人が多い、という見方ができます。

これは、働く人の考え方の違いとしても分かりやすい部分です。

日本では、今の職場に不満があっても、すぐに転職するより、まずは我慢して続けるという考え方をする人も少なくないかもしれません。

一方で、アメリカでは、より良い条件や自分に合う環境があれば、転職を前向きな選択肢として考える人が多い印象があります。

もちろん、これは国全体を一言で決めつける話ではありません。

日本にも積極的に転職する人はいますし、アメリカにも同じ会社で長く働く人はいます。

ただ、社会全体の空気として、仕事を変えることへのハードルは、アメリカの方が低いように感じられます。

日常のお店でも感じる、人の入れ替わりの早さ

アメリカの近代的なカフェ店内

僕もアメリカに20年いますけど、肌感覚としてこれはなんとなく分かる気がするんですね。

いろんなお店に買い物や食事に行くんですけど、その従業員さんってどんどん入れ替わるんですよ。

前回行ったときに対応してくれた人が、次に行くともういない。

そういう場面に何度も出会います。

お店に行くたびにスタッフが変わっていると、利用する側としても少し印象が変わります。

前に話した人がいない。

説明してくれた人がもう別の会社に移っている。

そういうことが続くと、そのお店との関係性も毎回リセットされるように感じます。

会社側にとっても、人が入れ替わるたびに、新しい人を採用し、仕事を教え、職場に慣れてもらう必要があります。

これは時間も労力もかかることです。

従業員が定着しないということは、単に人数が足りなくなるというだけではなく、サービスの安定やチームづくりにも影響する可能性があります。

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車ディーラーでは、担当者がすぐ変わる

車のディーラーは、その典型かもしれません。

あっという間に担当者が変わってしまうことがあるんですよね。

車のような大きな買い物では、担当者との信頼関係も大切です。

最初に説明してくれた人、見積もりを出してくれた人、納車やアフターサービスの相談をした人がすぐに変わってしまうと、お客様としては少し不安になることがあります。

担当者が変わること自体が悪いわけではありません。

会社としてきちんと引き継ぎができていれば、お客様対応は続けられます。

ただ、人の入れ替わりが多い業界では、会社全体としてサービスの質を安定させる仕組みがより重要になります。

セールスはチーム単位で動くこともある

特に車のセールスは、チームで動くことも多いんですね、こちらでは。

そのチームの中にリーダーがいるんですけど、そのリーダーが他のメーカーやディーラーから引っこ抜かれることが結構あります。

すると、自分の息がかかっているチームメンバーも一緒に連れていかれることがあるんですね。

たとえば、昨日まで「トヨタは最高、ホンダは悪だ」みたいなことを言っていたセールスマンが、いきなり次の日からホンダ側に移っていたりするんです。

そうなると、もちろん「ホンダ最高」と言い始めるんですね。

お客様の立場から見ると、ちょっと困った話ですよね。

車のセールスがチームで動く場合、リーダーの存在は大きくなります。

チームの動き方、営業のやり方、お客様への接し方などは、リーダーの考え方に影響されることがあります。

そのため、リーダーが別の会社やディーラーに移ると、チームのメンバーも一緒に動くことがあります。

これは、働く人にとっては信頼している人についていくという自然な選択でもあります。

一方で、会社側から見ると、1人が辞めるだけではなく、チーム単位で人材が抜ける可能性があるということです。

アメリカで従業員定着が難しいという話は、単に一人ひとりの転職だけではなく、こうしたチーム単位の流動性にも関わってきます。


会社側から見た、従業員定着の難しさ

オフィスでチームミーティング

会社にとって、従業員が定着することには大きな意味があります。

仕事を覚えた人が長く働いてくれれば、チームの連携も良くなりますし、お客様対応も安定しやすくなります。

逆に、人が頻繁に入れ替わると、採用、教育、引き継ぎに多くの時間がかかります。

特に小さな会社では、一人ひとりの存在感が大きくなります。

大企業であれば、人が入れ替わっても部署全体でカバーできる部分があるかもしれません。

しかし、小さな会社では、ひとりの退職が現場全体の動きに影響することがあります。

だからこそ、従業員に長く働いてもらうことは、会社の安定にも直結します。

参考までに、アメリカ労働統計局のデータでも、アメリカでは同じ勤務先で働く期間がそれほど長くないことが分かります。

2024年1月時点で、アメリカの賃金労働者の現在の雇用主での勤続年数の中央値は3.9年でした。

つまり、半分の人は今の勤務先での勤続年数が3.9年未満ということです。

もちろん、業界や職種、年齢によって状況は違います。

ただ、会社側から見ると、長く働いてもらうためには、ただ雇うだけではなく、働き続けたいと思える環境を作る必要がある、ということです。

転職が多いこと自体は、悪いことではない

通りを歩くビジネスパーソン

ここで大切なのは、転職が多いこと自体を悪いものとして見る必要はない、ということです。

働く人が、自分に合う環境を探すことは自然なことです。

より良い条件、より良い働き方、より成長できる場所を求めて動くことは、前向きな選択でもあります。

転職に対するイメージも、必ずしもネガティブなものではありません。

調査では、日本でも「新しいことにチャレンジできる」「職場環境を変えられる」「スキルアップや経験を積むことができる」といった前向きなイメージが上位に入っています。

これは、日本でもアメリカでも共通している部分です。

転職は、単に今の会社から逃げることではなく、新しい環境で挑戦したり、自分に合う働き方を探したりする手段でもあります。

ただ、会社側から見ると、それは常に選ばれる側であり続けなければいけない、ということでもあります。

人が動きやすい社会では、会社が「うちで働き続けたい」と思ってもらえる環境を作らなければ、人材は別の場所へ移っていきます。

そこに、アメリカで会社を経営する難しさがあります。

アメリカで人が動きやすい背景にあるもの

では、なぜアメリカではここまで人が動きやすいのか。

その背景の一つに、At-will雇用という考え方があります。

At-will雇用では、雇用主と従業員のどちらも、原則として雇用関係を終了できるとされています。

ただし、差別や報復など、違法な理由による解雇まで認められるわけではありません。

この仕組みについては、次回さらに詳しくお話しします。

アメリカの雇用環境は、とてもドライに見える部分があります。

ただ、その一方で、会社側も従業員側も、お互いに選び、選ばれる関係にある、ということでもあるんですね。

まとめ:アメリカで人が動きやすい社会で、会社ができること

アメリカでは、転職が珍しいものではなく、満足できる職場や自分に合う環境を求めて人が動きやすい社会があります。

日常のお店でも、車ディーラーのような専門的な現場でも、人の入れ替わりを感じる場面は少なくありません。

会社側から見ると、これは大きな課題です。

採用した人に仕事を覚えてもらい、チームとして動けるようになっても、より良い条件や環境があれば人は動いていきます。

だからこそ、アメリカで会社を経営するうえで、従業員定着は避けて通れないテーマになります。

次回は、その背景にあるAt-will雇用の考え方と、エコドライブが従業員に長く働いてもらうために大切にしていることについてお話しします。

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